問題
2026年7月30日以降、モロッコに隣接するスペインの飛地セウタ(人口約8.5万人)に、陸路と海路から5万〜7万人規模と報じられる移民が数日間で流入し、溺死や群衆事故により70人超が死亡した。移民たちは流入のきっかけとして「国境を突破できる可能性を示す動画がSNSで拡散されたこと」を証言している。スペインは軍を派遣し、浮体式フェンス設置後に流入はほぼ止まり、流入者の大部分は48時間以内にモロッコ側へ帰還したと発表された。一方、報道では国境管理を担うモロッコ当局の関与や黙認の可能性が指摘されており、イタリアとフランスはスペインからの到着者への取り締まり強化を表明した。
これらの事実が総体として示す、国際的な人の移動をめぐる構造的特質として最も適切なものはどれか。
A. 流入の大部分が数日で帰還に転じた事実は、移民圧力の根本要因である経済格差や紛争が短期間のうちに解消に向かったことを示している
B. 大規模流入の発生は長期的な移民圧力を背景としつつ、その規模とタイミングは「国境管理の運用」と「情報の拡散」という短期要因に規定されるため、国境管理の緩急それ自体が隣接国の外交的な圧力手段となり得る
C. 軍の派遣と物理的障壁によって流入が停止した事実は、大規模な人の移動が本質的に軍事的・物理的手段のみで解決可能な問題であることを示している
D. SNSでの動画拡散は情報伝達の速度を変えたにすぎず、流入の規模や発生時期を左右する要因とは無関係である
正解
B. 大規模流入の発生は長期的な移民圧力を背景としつつ、その規模とタイミングは「国境管理の運用」と「情報の拡散」という短期要因に規定されるため、国境管理の緩急それ自体が隣接国の外交的な圧力手段となり得る
迷いやすい誤答
A. 流入の大部分が数日で帰還に転じた事実は、移民圧力の根本要因である経済格差や紛争が短期間のうちに解消に向かったことを示している
「引き金」と「根本要因」の混同を検出する誤答。数日での大規模な反転は、今回の流入が構造的圧力の急変ではなく、国境管理の一時的な弛緩とSNSによる情報カスケードという短期的な引き金で生じたことを示すのであって、経済格差や紛争という背景圧力が消えたことを意味しない。事実(急速な帰還)は正しいが、そこから導く解釈が逆である点で、L5が測定対象とする「事実と含意の区別」を直接試す。
C. 軍の派遣と物理的障壁によって流入が停止した事実は、大規模な人の移動が本質的に軍事的・物理的手段のみで解決可能な問題であることを示している 「対症的な流入停止」と「問題の解決」の混同を検出する誤答。物理的措置は当面の越境を止めたが、死者を伴う人道危機、残留者への対応、隣接国との外交関係、EU域内への政治的波及(伊・仏の取り締まり強化表明)はいずれも物理的手段では解消されない。単一手段への還元という、前問(ライセンス生産)と同型の思考エラーを別文脈で検出する。